そんな疑問に接着剤の開発者が回答していきます。
本記事の信頼性
私は接着剤の開発を行っている化学エンジニアです。
大手の化学メーカーで接着剤、接着フィルムの開発を経験しており、日夜接着剤の開発業務に携わっています。
本記事では、これまでの開発の経験を元に接着剤、接着テープなどがくっつく原理について解説していきます。
接着剤は2つのポイントでくっついている
接着には、
- 接着剤自体の強度(引っ張られてもちぎれないこと)
- 接着剤と被着体(くっつける材料)のくっつき易さ
という2つのポイントがあり、両立して、始めて接着します。
どちらが抜けていても接着には至りません。
ではこの2つを強くすることを、開発者は考えて設計しています。
接着剤自体の強度が高くする方法
しっかり化学反応が進むように設計する
接着剤自体の強度を上げる方法は、接着剤がしっかり固まるように設計することです。
接着剤は化学反応によって液体から固体に変化します。
これは、化学反応により、接着剤が同士が結びついて、高分子と呼ばれる固くなった状態です。
接着テープの場合は元々のテープ自体が最初から高分子の状態となっています。
接着剤を厚くしている
接着剤の厚みも接着させるポイントです。
一般的に超強力と呼ばれる接着剤や接着テープを思い浮かべると、厚みがありませんか?
接着剤の厚みがあれば、接着剤を剥がそうとする力を接着剤自体が伸びることで、吸収できるため(糸曳き)、厚い設計となっています。
日本接着学会誌 47(8), 294-301 (2011)
続いて、接着剤と被着体(くっつける材料)のくっつき易さを高める方法をご紹介します。
接着剤と被着体(くっつける材料)のくっつき易くする方法
接着剤と被着体界面にひっかかりを作る
被着体に凹凸を作ることで、接着剤が固まった後に引っかかりくっつきやすくできます。
例えば、車の塗装などでも、紙やすりなどで表面をザラダラにした後に下地を吹き付けたりします。
これも凹凸を作り塗装や下地が剥がれにくくしているんです。
このように抜けにくくする方法をアンカー効果とも呼びます。
濡れ性を良くする
簡単に言えば接着剤と被着体の馴染みをよくすることです。
接着剤もくっつける相手によってもひっつき易さが違ってきます。
接着剤の裏に用途など記載がありますが、用途に合っていない材料は馴染みが悪くしっかりくっつかないためです。
また、フライパンがテフロンコートなどで馴染みを悪くさせ、くっつかないようにしています。
化学結合させる
化学結合とは接着剤と被着体の界面を化学反応させることを指します。
例えば、ガラスなどには、OH基やカルボキシル基と呼ばれる官能基があります。
この官能基を、化学的に反応させるために、エポキシ樹脂やイソシアネートと呼ばれるものを使用する場合があります。
以上のような要因で接着剤はくっついています。
接着剤の原理のまとめ
接着の原理は、接着剤と被着体の界面がしっかりくっつき、接着剤自体が硬いため、引き剥がす力に耐えられくっついています。
どちらが欠いても強くくっつけることはできません。
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