そんな人に向けて化学エンジニアの私が濡れ性について解説していきます。
本記事の信頼性
接着剤の開発を実施していたころ、界面の接着力を調整するため、濡れ性をコントロールしていました。
本記事では、過去の経験を元に界面接着力や、濡れ性について解説します。
濡れ性とは
濡れ性とはくっつける相手(被着体)との相性の良さを表す指標です。
くっつける相手と
馴染みが悪い:濡れ性が悪い(接触角が高い=弾く)
馴染みがいい:濡れ性が良い(接触角が低い=弾かない)
といった表現をします。
濡れ性が重要な理由とは
濡れ性が重要な理由は、界面のなじみが接着力に影響を与えるためです。
接着力は、一般的に言えば固く、接着する界面の密着力が強い場合に発現します。
何となく接着力が強いものは、カチンコチンのイメージがないでしょうか?
一般的にこのカチコチンを接着剤業界で言うと凝集力があると言います。
しかしそれだけでは、接着力は発現しません。
いくら固くとも、しっかり界面でくっついていなければ剥離してしまいます。
濡れ性が高い方が界面の密着性が良い理由
濡れ性が良いほうが上記の例ですと基材との界面の密着力が高くなります。
濡れ性が良いと密着力が高くなる理由についてもう少し掘り下げて考えてみましょう。
アンカー効果が発現する
接着剤や基材の表面はごく微細ですが、凹凸が生じています。
接着剤の濡れ性がよいと、樹脂が基材の凹凸に引っかかり剥がしにくくなります。
接触面積が増える
濡れ性の悪い場合、良い場合を例示します。
濡れ性の悪い場合を極端に言えば、接着剤が基材を掴む面積が十分ではなく、点で接しているため、剥離しやすくなります。
一方で、濡れ性が良い場合は基材を十分に接しており、剥離しにくくなります。
その結果、例えば、化学的に接着剤に基材と反応する成分が含まれていれば、化学的に結合が生じますし、カルボン酸やOH基などが基材や接着剤に含まれていいれば、水素結合を形成することができます。
また、接着剤と被着材の距離が非常に近づいている際に生じる接着剤の分子と被着材の分子との間の引き合う力が生じます。
おおまかに以上のような現象で、界面の密着力が発現するため、濡れ性が重要となります。
それでは、濡れ性の良し悪しを判断する方法について深堀りしていきます。
濡れ性を評価する方法
濡れ性を評価する方法を簡易的な方法から精細な方法含めてご紹介していきます。
簡易的な方法
簡易的な方法の1つにダインペンを使う方法があります。
ダインペン
① 各ダイン数(濡れ性の異なる)のテストペンで塗布します。塗布はペン先を表面に当て、均一になるよう塗布します。
② 塗布後、約2秒後の液膜の状態で適正を判断します。 図の状態を参考にしてください 液膜に破れや収縮が起きていなければ、塗れています。ダインレベル判定は、ぬれが2~3秒以上保つ場合はさらに高いダイン数のインクで順次テストし、判定します。また、液膜に破れや収縮が起きているときは低いダイン数のインクで順次テストし判定していきます。
出展:株式会社マシンテックス様
イメージがつきづらいと思いますので、ダインペンで評価したYoutube動画を拝見しましたので、リンクを貼らせて頂きます。
精細な方法
精細な方法としては接触角が挙げられます。
だと思いますが、接触角計を利用して、一般的に言う接触角は水を基材に垂らして、基材と水滴の角度を測定する方法です。
この方法からですと濡れ性を比較する場合、表面自由エネルギーを算出して比較する場合が多いです。
正確に濡れ性を考えてみたい場合はコチラの協和界面科学株式会社様が詳細に表面自由エネルギーの算出について記載していますので、ご参照ください。
難しそうに感じる場合は基材に直接接着剤を垂らしてみて、接触角を見ることがおすすめです。
それでは文言の整理をしてみましょう。
濡れ性、接触角、表面張力、表面自由エネルギーは全部意味合いは同じ
基本同じような話です。違いについても協和界面科学株式会社様のHPで詳しく記載がございますので、そちらを参照ください。
表面張力と表面自由エネルギー
表面張力は、分子と分子の間に働く分子間力に起因します。右図のように液体表面付近の分子の状態は、バルクの分子はあらゆる方向に分子間力が働いているため、全体としては釣り合っています。しかし、表面の分子は横方向と内側にしか分子間力が働きません。
表面では大気側に引き合う相手を求めて過剰なエネルギーが存在し、これが表面張力となります。このとき、表面の分子は力のバランスが崩れ、液体の表面積が小さくなるように丸まろうとします。これが表面張力(分子間力)の大きさによって、ぬれ性が左右される所以です。
なお、液体の表面張力に対して固体の表面張力は、表面自由ネエルギーと呼ばれることが多いです。表面張力(mN/m)は、単位長さの線を引張るのに必要な力であるのに対し、表面自由エネルギー(mJ/m2)は、単位面積の面を広げるのに必要なエネルギーと表現され、単位は異なりますが値は等しくなります。
出展:協和界面科学株式会社様
まとめ
最後に本記事のまとめを記載しておきます。
頭の整理にご活用ください。
まとめ
- 濡れ性は接着剤と基材(被着体)との密着性を高めるために必要
- 接着剤の硬さ(凝集力)も接着力を高めるためには必要だが、濡れ性(界面の密着力)も同時に必要
- 濡れ性の判断には、ダインペン、接触角の測定が有効
- 濡れ性、接触角、表面張力、表面自由エネルギーなど用語があるが、概ねすべて同じ内容を話している
ご参考になれば幸いです。
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